初めての経営事項審査で押さえるべきポイントとは?

初めての経営事項審査 押さえるべきポイントとは? 経営事項審査

経営事項審査とは何か?初めて経審の申請をする方向けに概要と目的を解説!

建設業界に携わる方なら、「経営事項審査」、通称「経審」という言葉を耳にしたことがあるでしょう。

この記事では、経審とは何か、そしてどのような場合に必要となるのかについて詳しく説明していきます。

経審は、公共工事を元請業者として直接官公庁から受注したい場合に必須となる審査です。つまり、公共工事の元請を目指さない業者にとっては、必ずしも受ける必要はありません。

※ 公共工事の受注プロセスについては、別の記事で詳細を解説しています。 この記事では、経審の全体像を把握していただくために、以下の内容を順を追って解説していきます。

  1. 経審の流れ
  2. 審査の仕組み
  3. 点数アップの方法
  4. 審査に関わる報酬額

これらの情報を通じて、経審についての理解を深めていただければと思います。

1.経営事項審査とは?

では、「経営事項審査」とは具体的にどのようなものなのでしょうか?  これは、建設業者の実力を客観的に数値化する制度です。

公共工事を発注する行政側としては、何の基準もない状態では、どの業者に依頼すればよいのか判断が難しくなります。そのため、業者ごとに点数が付けられていれば、

「この工事は規模が大きいので900点以上の業者に依頼しよう」

「この工事は比較的小規模だから500点の業者でも十分だ」

といった形で、発注先の選定がしやすくなるわけです。

このページの冒頭でも触れましたが、公共工事を請け負いたい場合、経営事項審査の受審は避けて通れません。

そして、この審査を受ける前提条件として、まず 建設業許可を取得していること が必要になります。

民間工事であれば、500万円未満の工事については建設業許可が不要ですが、公共工事の場合はたとえ500万円未満の案件であっても経営事項審査が必須です。つまり、公共工事を目指すなら、建設業許可の取得は不可欠ということになります。

一方で、建設業許可を取得していれば、どのような業者でも経営事項審査を受けることが可能です。

「許可を取ったばかりの会社だから…」
「まだ設立したばかりで売上がないから…」

といった理由で審査を受けられないのでは? と不安に思う方もいるかもしれませんが、その点は問題ありません。建設業許可さえ取得していれば、いつでも経営事項審査を受けることができます。

ただし、実績が少ない状態で受けると、どうしても点数は低めになる点には注意が必要です。

2.経営事項審査申請の流れ

次に経営事項審査申請の流れを説明していきます(建設業許可を受けている前提です)。

STEP1建設業許可を受ける
STEP2決算変更届を提出する
STEP3経営状況分析を受ける
STEP4経営規模等評価申請をする
STEP5経営事項審査の結果通知が届く

・・・と、こんな流れですね。それぞれを下で詳しく説明していきます。

決算変更届の提出

建設業許可を取得している業者は、決算日から4か月以内に「決算変更届」(地域によっては「事業年度終了届」と呼ばれることもあります)を、許可を受けた行政庁(東京都、大阪府、地方整備局など)へ提出する必要があります。

この届出は、経営事項審査の受審に関係なく、建設業許可を持つすべての業者に義務付けられているため、忘れずに対応しましょう。

提出書類には、以下のようなものが含まれます。

  • 決算期の財務諸表(税理士が確定申告時に作成した決算書を、建設業法の基準に沿って書き換えたもの)
  • 決算期に実施した工事の経歴書

一般的に、法人の場合は決算日から2か月以内に税務署へ申告を行います。その後、さらに2か月以内に決算変更届を提出する流れとなります。

経営状況分析機関へ財務諸表を提出

先ほど作成した決算変更届の財務諸表を、経営状況分析機関へ提出し、財務状況を点数化してもらいます。

この経営状況分析機関は、国土交通省に認可された民間法人が運営しており、どの機関を利用しても評価基準は統一されているため、点数に違いはありません。

現在、認可を受けている経営状況分析機関は以下の通りです。

  • 一般財団法人 建設業情報管理センター
  • (株)マネージメント・データ・リサーチ
  • ワイズ公共データシステム(株)
  • (株)九州経営情報分析センター
  • (株)北海道経営情報センター
  • (株)ネットコア
  • (株)経営状況分析センター
  • 経営状況分析センター西日本(株)
  • (株)日本建設業経営分析センター
  • (株)建設システム
  • (株)建設業経営情報分析センター

なお、手数料や分析結果が出るまでの期間は機関によって異なるため、申し込み前に確認しておくと安心です。

また、毎年同じ機関に依頼すれば提出資料が簡略化できるメリットがあります。ただし、規模の小さい機関を選ぶと廃業してしまう可能性もあるため、心配な場合は一般財団法人 建設業情報管理センターを利用すると確実でしょう。

経営規模等評価申請書を提出

経営状況分析機関から経営状況分析結果通知書が発行されますので、その通知書を添付し、大阪府、東京都、地方整備局など、建設業許可を受けた行政機関へ経営規模等評価申請書を提出します。

申請が受理されると、通常約1か月以内に経営事項審査の結果が通知されます。

ただし、この結果が届いたからといって、すぐに公共工事の入札に参加できるわけではありませんので、ご注意ください。

どんな会社が建設業許可を取得したらよいのか?

記事の冒頭でも触れましたが、公共工事に参加したい業者は建設業許可を取得するべきでしょう。でもそれだけではありません。いくつか例を挙げてみますね。

1. 公共工事に参加する業者

  • 公共工事の入札資格: 経営事項審査は、公共工事に入札するための必須条件です。公共事業を受注したい業者は、必ずこの審査を受ける必要があります。

2. 競争力を高めたい業者

  • 市場競争への対応: 経営事項審査を受けることで、他の業者と比較した自社の強みや弱みを把握できます。これにより、競争力を高めるための戦略を立てることが可能です。

3. 経営の透明性を求める業者

  • 信頼性の向上: 経営事項審査を受けることで、企業の経営状況や技術力が客観的に評価されます。これにより、取引先や顧客からの信頼を得やすくなります。

4. 経営改善を目指す業者

  • 自社の評価を活用: 審査を通じて得られる評価は、経営改善のための指針となります。自社の強みを活かし、弱みを克服するための具体的な施策を講じることができます。

5. 財務状況の健全性を確認したい業者

  • リスク管理の強化: 経営事項審査では、財務状況や経営体制の評価が行われます。これにより、潜在的なリスクを把握し、適切な対策を講じることができます。

このように経営事項審査は、公共工事に参加するための必須要件であり、企業の競争力や信頼性を高めるために重要です。特に、公共事業を受注したい業者や経営改善を目指す業者は、この審査を受けることが求められます。経営事項審査を通じて得られる情報は、企業の成長に大きく寄与するでしょう。

経営事項審査の手続きと申請方法

申請書類の一覧と作成時の注意点

経営事項審査を受ける際に必要な書類は、企業の状況や審査の種類によって異なる場合がありますが、一般的に以下の書類が求められます。

経営事項審査に必要な書類一覧

  • 法人登記簿謄本: 企業の基本情報を証明するための書類。
  • 決算書: 最近の決算書(貸借対照表、損益計算書など)を提出する必要があります。
  • 経営状況報告書: 経営の現状や将来の見通しを記載した報告書。
  • 技術者名簿: 企業に所属する技術者の資格や経験を示す名簿。
  • 財務諸表: 企業の財務状況を示すための書類(資産、負債、純資産の状況など)。
  • 労働保険・社会保険の加入証明書: 労働者の保険加入状況を証明する書類。
  • 過去の工事実績: 企業が過去に行った工事の実績を示す書類。
  • 経営方針書: 企業の経営方針や戦略を記載した文書。

注意点

  • 書類の提出方法や必要な書類は、地域や審査機関によって異なる場合がありますので、事前に確認することが重要です。
  • 書類は最新のものである必要があり、正確な情報を提供することが求められます。

経営事項審査に必要な書類は、企業の信頼性や能力を示す重要な要素です。適切に準備し、審査をスムーズに進めることが成功の鍵となります。

書類の提出方法:オンライン・郵送・受付窓口

経営事項審査の申請書類の提出方法には、オンライン、郵送、受付窓口の3つの方法があります。それぞれの方法について詳しく説明します。

1. オンライン提出

  • 手続き: 経営事項審査の申請は、専用のオンラインシステムを通じて行うことができます。企業は、必要な書類をデジタル形式でアップロードし、申請を完了させます。
  • 利点:
    • 迅速な処理が可能
    • 書類の紛失リスクが低い
    • 24時間いつでも申請が可能

2. 郵送提出

  • 手続き: 申請書類を印刷し、必要な書類を郵送する方法です。郵送先は、各地方自治体や審査機関によって異なるため、事前に確認が必要です。
  • 利点:
    • オンライン環境が整っていない場合でも利用可能
    • 書類を物理的に保管できる

3. 受付窓口提出

  • 手続き: 審査機関の指定する窓口に直接書類を持参して提出します。この方法では、担当者と直接対話できるため、疑問点をその場で解消することができます。
  • 利点:
    • 直接確認ができるため、書類の不備をその場で修正可能
    • 審査機関の担当者と直接コミュニケーションが取れる

経営事項審査の申請書類は、オンライン、郵送、受付窓口のいずれかの方法で提出できます。

申請手数料

経営事項審査の申請手数料は、申請する業種数と「総合評定値」を申請するかどうかによって異なります。以下に、業種数ごとの手数料をまとめます(北海道の場合)。

申請業種数 総合評定値を申請する場合の手数料 総合評定値を申請しない場合の手数料
1業種 11,000円 10,400円
2業種 13,500円 12,700円
3業種 16,000円 15,000円
4業種 18,500円 17,300円
5業種 21,000円 19,600円
6業種 23,500円 21,900円
7業種 26,000円 24,200円
8業種 28,500円 26,500円
9業種 31,000円 28,800円
10業種 33,500円 31,100円

北海道の場合、手数料は北海道収入証紙で納付する必要があります。収入証紙は、各総合振興局の売店などで購入できます。

評点・点数の算出方法と評価基準

経営事項審査の評点の基礎知識

建設業者が公共工事の入札に参加するためには、「経営事項審査(経審)」を受ける必要があります。経審では、経営状況や技術力などを数値化し、総合的な評価が行われます。この評価に基づき、入札参加資格が決まるため、評点の仕組みを理解することは重要です。ここでは、経審の評点について基本的な知識を解説します。

1. 評点(P点)とは?

経審では、建設業者の経営状況や施工実績、技術力などを評価し、数値化した「評点(P点)」が算出されます。この評点が高いほど、公共工事の入札で有利になります。

2. 評点を構成する4つの指標

経営事項審査の評点は、以下の4つの指標を基に算出されます。

  1. 経営規模(X点)
    売上高や自己資本額、利益額などを基に企業の規模を評価します。

  2. 経営状況(Y点)
    財務内容を評価する指標で、自己資本比率や利益率などが影響します。

  3. 技術力(Z点)
    有資格技術者の数や工事実績を基に、技術力を評価します。

  4. 社会性等(W点)
    法令遵守状況、労働環境改善の取り組み、建設業退職金共済制度の加入状況などが含まれます。

3. 総合評点(P点)の計算方法

上記の4つの指標を一定の計算式で組み合わせ、総合的な評価点(P点)が算出されます。P点の計算式は以下の通りです。

総合評点P = 0.25X1 + 0.15X2 + 0.2Y + 0.25Z + 0.15W
(*)小数点以下に端数がある場合は四捨五入します。

総合評点Pのウェイト
X1:完成工事高評点
X2:経営規模評点
Y: 経営状況分析評点
Z: 技術力評点
W: その他評点

完成工事高評点X1と技術力評点Zは、業種区分ごとに算出し、 それ以外は共通になります(業種によって変わることはありません)。

各評点は、制度設計時点で700点が平均になるように設計されています。

各評点のうち、最もウェイトの大きい完成工事高評点X1と 技術力評点Zをアップさせることが 評点アップへの近道です。

また、「その他評点W」には下記の事柄が含まれています。

経営事項審査(経審)の「その他評点W」には、企業の社会性や経営の安定性を示す要素が含まれます。具体的には、以下のような項目が評価対象となります。

1. 防災活動への貢献
  • 防災協定の締結状況(自治体との災害時応援協定など)
  • 消防団協力事業所としての認定
2. 建設業の法令遵守・経営の透明性
  • 建設業法や労働基準法に関する違反歴の有無
  • 監査証明を受けた財務諸表の提出
3. 労働環境の整備・福利厚生
  • 雇用保険・社会保険への加入状況
  • 退職金共済制度への加入
  • 若年者や高齢者、障がい者の雇用促進
4. 環境への配慮
  • ISO14001(環境マネジメントシステム)の取得
  • グリーン購入法適合商品の使用状況
5. 研究開発・技術力の向上
  • 建設技術の研究開発への取り組み
  • 特許や技術認証の取得状況
6. 建設業に関する社会的貢献
  • 地域貢献活動(ボランティア、教育機関との連携など)
  • 技能検定合格者や資格取得者の在籍状況

これらの項目に加えて、国や自治体の基準によって細かい評価基準が変わることがあります。特に、社会保険加入状況や法令遵守に関する評価は近年厳しくなっており、適切な管理が求められています。

4. 評点の重要性

評点が高いと、入札での競争力が向上し、受注機会が増える可能性が高まります。そのため、建設業者は経審の申請前に、自社の強みを最大限に活かす戦略を考えることが重要です。

点数を向上させるための具体的対策

では、これらの点数を向上させるために具体的に何をすれば良いのでしょうか。

評点が高ければ入札の機会が増え、より有利な条件で競争できます。ここでは、評点(P点)を向上させるための具体的な対策を分かりやすく解説します。

1. 経営規模(X点)を向上させる方法

経営規模(X点)は、企業の売上高や自己資本額、利益額によって決まります。以下の方法で向上させることが可能です。

  • 売上高を増やす
    過去2年間の平均完成工事高が評価対象となるため、可能であれば大きな工事案件を受注し、売上を増やしましょう。
  • 自己資本を増やす
    自己資本比率が高いほど評価が上がるため、不要な負債を減らし、利益を内部留保することが重要です。
  • 利益を確保する
    経営効率を改善し、利益率を向上させることで、経営規模の評価が高まります。

2. 経営状況(Y点)を改善する方法

財務内容を評価する経営状況(Y点)は、以下の対策で向上できます。

  • 財務内容の改善
    • 不要な借入金を減らし、自己資本を増やす
    • 売掛金の回収を早め、キャッシュフローを健全に保つ
    • 経費を削減し、利益率を向上させる
  • 適正な決算書の作成
    • 税理士や会計士と相談し、経審に有利な財務内容となるように調整する

3. 技術力(Z点)を向上させる方法

技術力(Z点)は、技術者の資格保有状況や施工実績によって決まります。

  • 資格保有者を増やす
    1級・2級施工管理技士などの資格を持つ社員を増やすことで、点数が上がります。資格取得の支援制度を導入するとよいでしょう。
  • 工事実績を積む
    公共工事の施工実績がZ点に影響するため、積極的に公共工事を受注し、実績を積み上げることが重要です。

4. 社会性等(W点)を向上させる方法

社会性等(W点)は、労働環境の改善や法令遵守などの取り組みで評価されます。

  • 建設業退職金共済制度(建退共)に加入する
    加入していると点数が加算されるため、未加入の場合は加入を検討しましょう。
  • 社会保険の加入を徹底する
    健康保険・厚生年金・雇用保険に全社員が加入していることが重要です。未加入だと減点の可能性があります。
  • 法令遵守を徹底する
    労働基準法や建設業法を遵守し、行政処分を受けないよう注意しましょう。

5. 総合的な対策

  • 経審のシミュレーションを行う
    事前に経審のシミュレーションを行い、自社の評点を把握することで、どの項目を改善すべきか明確になります。
  • 専門家に相談する
    行政書士や経営コンサルタントに相談し、経審の対策を講じるのも有効です。

経営事項審査の有効期限は?

経営事項審査の有効期間は「審査基準日から1年7か月」と定められています。

この審査基準日とは、基本的には決算日を指しますが、会社合併後や新設法人の場合など、例外的に異なるケースもあります。

つまり、決算日から1年7か月間が経審の有効期間ということになりますが、この期間が少し中途半端に感じられるかもしれません。

経営事項審査は、決算日を基準に企業の評価を行います。そのため、申請の準備は確定申告が完了してからでないと進められません。確定申告の期限は決算日から2か月以内と定められているため、必然的に経審の手続きはその後に開始されます。

そこから必要な手続きを進め、最終的に審査結果を受け取るまでには約2か月かかります。スムーズに進めたとしても、決算日から経営事項審査が完了するまでに4か月程度は必要になる計算です。

仮に経審の有効期間が決算日から1年間しかなかった場合、次の決算日を迎えた時点で即座に期限切れとなってしまいます。こうした事態を防ぐため、決算後の新たな経審を受けるための猶予期間として7か月が設けられているのです。

スムーズに手続きを進めた場合、決算日から約4か月で新しい審査結果を受け取れますので、実質的に3か月分の余裕が確保されている形になります。このような事情を考慮した結果、1年7か月という一見中途半端な有効期間が設定されているんです。

したがって、決算後7か月以内には経営事項審査を済ませる必要があるということになり、結局のところ毎年審査を受ける必要があるということになります。

なお、経審の有効期限が切れた状態で次の審査結果を受け取れなかった場合、その間は公共工事の入札に参加できなくなるため注意が必要です。

さらに問題なのは、有効期限切れをうっかり忘れたまま入札し、落札してしまった場合です。この場合、ペナルティとして指名停止処分を受ける可能性があり、1〜2年の間、その行政機関の工事を請け負えなくなることもあるため、十分な管理が求められます。

まとめ

経営事項審査の評点を向上させるには、経営規模・経営状況・技術力・社会性の各分野で適切な対策を講じることが大切です。特に、資格取得の促進、財務体質の改善、社会保険の加入 などは、比較的取り組みやすい改善策です。事前にしっかり準備を行い、評点を最大化しましょう。

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